対談
 第1部 顔の見える作り手たち(1)
 第2部 顔の見える作り手たち(2)
 第3部 輪島の作り手たち
 第4部 使い手たちからの素朴な質問
 第5部 私好み[高森寛子篇]
 第6部 私好み[小川マア篇]
 
写真
 Part 1 二人が考える普段使い
 Part 2 うるしの器・目のつけどころ
 Part 3 私好み[高森寛子]
 Part 4 私好み[小川マア]
 
漆の器の作り手紹介
 
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第4部 使い手たちからの素朴な質問
 
高森 最近、ちょっと面白いエピソードがありました。私は本当にびっくりしたんですよ。「いよいよ漆の使い手デビューします」と言って、20代の女性がコップを選んだんです。一つ目の漆を持つ時は誰でもみんな汁椀なんだ、と思っていた私の考え方が大げさにいえば覆された。「こんな人もいるんだ!」という驚き。
小川 それも、いいことじゃないですか!
高森 今は、味噌汁を飲まない人がいるんですね。自分にとって毎日繰り返し使える必須アイテムはなんだろうと考えた時に、「汁椀じゃないわ」という人がいる時代なんだなと思わされました。彼女にとって必要なのは、コップだったんですね。その人は夜、ご飯を食べないんですって。ワインを飲んで、オツマミを食べる。それだけでおしまい。一人暮らしだっていうんだけど……。
小川 オヤジですねぇ(笑)。でも、よくわかる。若い世代になれば、十分にあり得ることかな。少々複雑な思いもないではないが……。
高森 あそのコップさえ持っていれば、ワインも冷酒もミルクもジュースも水も、みんな飲める。彼女にとって、一番繰り返し使えて便利な器はコップだったんです。基本的なところに立ってもの選びをしているわけだから、それはびっくりしましたが納得もしました。そういう出会いと体験があったことで、私もちょっとものの考え方と見方が変わってきました。人にものを勧めることの幅が広がったと思いますよ。